「余市」と「宮城峡」は、どちらもニッカウヰスキーが造るジャパニーズ・シングルモルトウイスキーです。度数も容量も同じで、希望小売価格も同じ。並べて売られていることも多いため、「どちらを買えばいいの?」と迷う方も多いのではないでしょうか。

結論から言うと、余市は「力強くスモーキー」、宮城峡は「華やかでフルーティー」。同じニッカでも、蒸溜所の場所と蒸溜方法がまったく違うため、味わいは対照的と言ってよいほど分かれます。この記事では、2本の違いを味わい・蒸溜所・飲み方・価格の順に比べ、どちらを選べばよいかの目安を紹介します。

ひと目でわかる余市と宮城峡の違い

余市宮城峡
種類シングルモルト(日本)シングルモルト(日本)
蒸溜所余市蒸溜所(北海道余市町)宮城峡蒸溜所(宮城県仙台市)
蒸溜所の誕生1934年1969年
蒸溜の加熱方法石炭の直火スチーム(蒸気)による間接加熱
香りやわらかな樽香と麦芽の甘さ、果実香りんごや洋梨のような甘く華やかな香り、バニラ
味わい力強いピートと香ばしさ、重厚なコクドライフルーツのような甘さ、なめらか
スモーキーさしっかり感じるほとんどない
度数45%45%
向く飲み方ストレート、ハイボールストレート、少量の加水、ハイボール

ひとことで言えば、燻製のような香ばしさと力強さを楽しみたいなら余市、果実のような甘く華やかな香りを楽しみたいなら宮城峡です。

味わいの違い

余市:力強く、スモーキーで重厚

ノンエイジ(熟成年数の表記がないもの)の余市は、やわらかな樽熟成香と麦芽の甘さ、豊かな果実香に、力強いピートの味わいが重なるシングルモルトです。ピートとは、麦芽を乾燥させるときに焚く泥炭のことで、燻製のようなスモーキーな香りのもとになります。

  • 香り: やわらかな樽熟成香と麦芽の甘さ、豊かな果実香
  • 味わい: 力強いピートの味わいと香ばしさ
  • 余韻: 穏やかに続くオークの甘さと、スモーキーな後味

スモーキーさははっきり感じられますが、アイラ島の一部のウイスキーのような、薬品を思わせる強い香りとは方向性が異なり、香ばしさとコクのあるスモークです。

宮城峡:華やかでフルーティー、なめらか

宮城峡は、りんごや洋梨を思わせる甘く華やかな香りが特徴のシングルモルトです。

  • 香り: りんごや洋梨のような甘く華やかな香りに、樽由来のやわらかなバニラ
  • 味わい: ドライフルーツのような甘さと、なめらかな口当たり
  • 余韻: モルトの甘みと樽香がやさしく広がる

スモーキーさはほとんどなく、燻製の香りが苦手な方や、ウイスキーに慣れていない方でも手に取りやすい味わいです。

蒸溜所と造り方の違い

対照的な味わいは、蒸溜所の環境と蒸溜方法の違いから生まれています。

余市蒸溜所:竹鶴政孝が選んだ北の地、石炭直火蒸溜

余市蒸溜所は、北海道余市町にあるニッカ最初の蒸溜所です。スコットランドでウイスキー造りを学んだ竹鶴政孝が、スコットランドに近い環境を求めて日本各地を探し、冷涼で湿潤なこの地を選んで1934年に開きました。

余市蒸溜所の最大の特長は、ポットスチル(単式蒸溜器)を石炭の直火で加熱する蒸溜方法を今も守っていることです。

  • 石炭の直火は火加減の調整が難しく、職人が火の様子を見ながら石炭をくべる
  • ポットスチルは首がまっすぐな「ストレートヘッド型」で、蒸気を送る管(ラインアーム)が下向きについている
  • こうした蒸溜から、力強く重厚な原酒が生まれる

海からの風と川霧がもたらす湿った空気の中で、原酒はゆっくりと熟成されます。敷地内の正門や蒸溜棟などの建物は、2022年に国の重要文化財に指定されました。

宮城峡蒸溜所:2つの川が合流する、ニッカの第二の蒸溜所

宮城峡蒸溜所は、宮城県仙台市の西、広瀬川と新川(にっかわ)が合流する緑豊かな峡谷に、1969年に開かれました。竹鶴政孝は、余市とは異なる個性の原酒を造り、それらを合わせてより複雑なウイスキーを生み出すことを目指して、この第二の蒸溜所を建てました。

  • 仕込み水には、日本の蒸溜所の中でも硬度が特に低い(やわらかい)とされる新川の水を使う
  • モルトの蒸溜は、スチーム(蒸気)による約130℃の間接加熱
  • ポットスチルは首の下がふくらんだ形で、ラインアームが上向きについている。蒸気が蒸溜器の中で行き来しやすく、華やかでなめらかな原酒になる

なお、宮城峡蒸溜所には「カフェスチル」と呼ばれる旧式の連続式蒸溜機もあり、グレーンウイスキーも造られています。

2つの蒸溜所の違いを整理すると

余市蒸溜所宮城峡蒸溜所
場所北海道・海に近い町宮城県・山あいの峡谷
加熱方法石炭の直火スチームによる間接加熱
ラインアーム下向き上向き
原酒の個性力強く重厚、スモーキー華やかでなめらか、フルーティー

おすすめの飲み方の違い

どちらもストレートからハイボールまで楽しめますが、それぞれの良さが出やすい飲み方には違いがあります。

余市:ストレートで力強さを、ハイボールで香ばしさを

余市の力強さを味わうなら、まずはストレートがおすすめです。ハイボールにすると、ピートの香ばしさが心地よく立ち、食事にもよく合います。

ホッケの開きやジンギスカン、燻製、炭火焼きなど、香ばしい料理と相性の良い一本です。スモーキーなハイボールをほかにも探したい方は、スモーキーなハイボール向きの銘柄のまとめページも参考にしてください。

宮城峡:ストレートや少量の加水で、華やかな香りを

宮城峡の華やかな果実香は、ストレートや少量の加水(数滴の水を加える飲み方)でいちばん感じやすくなります。ハイボールにすると、りんごのような香りが軽やかに立ちます。

牛たんの塩焼きやホタテ、フルーツを使ったデザートと合わせるのもおすすめです。フルーティーな銘柄をほかにも見たい方は、フルーティーなウイスキーのまとめページもどうぞ。

10年になると何が変わる?

余市と宮城峡には、どちらも熟成年数を表記した「10年」があります。ノンエイジ品との違いを簡単にまとめます。

余市10年宮城峡10年
香りウッディで甘いオーク、熟したバナナのような果実香りんごやシトラスのようなフルーティーな香り、ほのかなバニラ
味わい洋梨のような甘酸っぱさと、燻製を思わせるピート、重厚なコク熟した果実感とモルトの甘さが調和した豊かな味わい
余韻コクとピートの香ばしさが長く続く甘くほろ苦い余韻
発売2022年(年間9,000本の数量限定)2025年10月(国内9,000本の数量限定)
向く飲み方ストレート、少量の加水ストレート、少量の加水
  • 余市10年は、熟成年数を表記した余市としては7年ぶりの商品として2022年に発売されました。ノンエイジ品より果実香とコクが増し、ピートも重厚な印象になります
  • 宮城峡10年は、10年以上熟成させた原酒を使い、2025年10月に数量限定で発売されました。りんごやシトラスのような果実香に、熟成によるやわらかな甘さが加わります

どちらも数量限定のため、時期によっては店頭で見つけにくいことがあります。

参考価格

銘柄容量参考価格(税込)
余市700ml約7,700円
宮城峡700ml約7,700円
余市10年700ml—
宮城峡10年700ml約13,200円

価格は2026年10月時点の参考価格(メーカー希望小売価格・参考小売価格、税込)です。販売店や時期により異なります。余市・宮城峡は2024年4月出荷分からの価格改定後の価格です。余市10年は現在の希望小売価格を確認できなかったため記載していません。数量限定品は、店頭や通販ではこれより高く売られていることがあります。

ノンエイジ品どうしは希望小売価格が同じなので、価格ではなく味わいの好みで選べるのが余市と宮城峡の比べやすいところです。

どちらを選ぶ?迷ったときの目安

こんな方にはおすすめ
スモーキーで力強い味が好き余市
甘く華やかな果実の香りが好き宮城峡
燻製の香りが苦手宮城峡
香ばしい料理とハイボールで合わせたい余市
ストレートで香りをじっくり楽しみたい宮城峡(力強さを味わうなら余市)
2つの個性を1本で味わいたい竹鶴ピュアモルト

最後の「竹鶴ピュアモルト」は、余市と宮城峡、2つの蒸溜所のモルトを合わせたニッカのピュアモルト(ブレンデッドモルト)です。やわらかな樽香と果実香に穏やかなピートが寄り添い、まさに両方の個性を合わせた味わいです。詳しくは竹鶴ピュアモルトの銘柄ページをご覧ください。

まずは余市と宮城峡をハイボールやストレートで飲み比べてみるのもおすすめです。バーで1杯ずつ頼めば、同じニッカとは思えないほどの違いがよく分かります。ほかのジャパニーズウイスキーも見たい方は、ジャパニーズウイスキーのまとめページもご覧ください。

まとめ

  • 余市: 北海道の余市蒸溜所で、石炭の直火蒸溜から生まれる、力強くスモーキーで重厚なシングルモルト
  • 宮城峡: 仙台の宮城峡蒸溜所で、スチームによる間接蒸溜から生まれる、華やかでフルーティーなシングルモルト
  • どちらも度数45%で、希望小売価格も同じ。選ぶ基準は「スモーキーな力強さ」か「華やかな果実香」か

竹鶴政孝が「異なる個性の原酒を造る」ために建てた2つの蒸溜所だからこそ、余市と宮城峡の違いははっきりしています。好みの方向性に合わせて、ぜひ選んでみてください。お酒は20歳になってから、ほどほどに楽しみましょう。