ニッカウヰスキーの定番モルトといえば、「竹鶴ピュアモルト」「シングルモルト余市」「シングルモルト宮城峡」の3本です。どれも700mlで、希望小売価格も同じ。ラベルの雰囲気も近いため、酒売り場で「どれを選べばいいの?」と迷う方も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、3本の関係はとてもシンプルです。**余市と宮城峡は、それぞれ1つの蒸溜所だけで造った「シングルモルト」。竹鶴ピュアモルトは、その2つの蒸溜所のモルトを合わせた「ピュアモルト」**です。つまり竹鶴は、余市と宮城峡の“いいところ取り”をした1本と言えます。
この記事では、3本の違いを造り・味わい・飲み方・価格の順に比べ、どれから選べばよいかの目安を紹介します。余市と宮城峡の2本をもっと詳しく比べたい方は、余市と宮城峡の違いの記事もあわせてご覧ください。
ひと目でわかる3本の違い
| 竹鶴ピュアモルト | 余市 | 宮城峡 | |
|---|---|---|---|
| 種類 | ピュアモルト(ブレンデッドモルト) | シングルモルト | シングルモルト |
| 使っている原酒 | 余市と宮城峡のモルト | 余市蒸溜所のモルトのみ | 宮城峡蒸溜所のモルトのみ |
| 香り | やわらかな樽香に、りんごや洋梨の果実香 | やわらかな樽香と麦芽の甘さ、果実香 | りんごや洋梨のような甘く華やかな香り、バニラ |
| 味わい | ふくよかなコクと甘さ、ほのかなピート | 力強いピートと香ばしさ | ドライフルーツのような甘さ、なめらか |
| スモーキーさ | 穏やか | しっかり | ほとんどない |
| 度数 | 43% | 45% | 45% |
| 容量 | 700ml | 700ml | 700ml |
ざっくり言えば、スモーキーで力強い余市、華やかでフルーティーな宮城峡、その間でバランスをとった竹鶴という位置づけです。
「シングルモルト」と「ピュアモルト」の違い
3本の違いを理解するカギは、ラベルにある「シングルモルト」と「ピュアモルト」という言葉です。
- モルトウイスキー: 大麦麦芽(モルト)だけを原料に造るウイスキー
- シングルモルト: 1つの蒸溜所で造ったモルトウイスキーだけを瓶詰めしたもの。その蒸溜所の個性がそのまま出る
- ピュアモルト(ブレンデッドモルト): 複数の蒸溜所のモルトウイスキーを合わせたもの。トウモロコシなどから造るグレーンウイスキーは混ぜない
一般に「ブレンデッドウイスキー」と呼ばれるものは、モルトとグレーンを合わせたものです。竹鶴ピュアモルトはグレーンを使わず、モルトだけを合わせている点が違います。
余市と宮城峡は、それぞれの蒸溜所の個性を味わうシングルモルト。竹鶴ピュアモルトは、個性の異なる2つのモルトを組み合わせて、1本の中で調和させたウイスキーです。
3本の原点:竹鶴政孝と2つの蒸溜所
3本はどれも、ニッカの創業者・竹鶴政孝(たけつる まさたか)がつくった2つの蒸溜所から生まれています。
余市蒸溜所:石炭直火で造る、力強いモルト
余市蒸溜所は、北海道余市町にあるニッカ最初の蒸溜所で、1934年に開かれました。スコットランドでウイスキー造りを学んだ竹鶴政孝が、冷涼で湿潤な環境を求めて選んだ土地です。
ポットスチル(単式蒸溜器)を石炭の直火で加熱する蒸溜を今も続けており、ここから力強く重厚な原酒が生まれます。
宮城峡蒸溜所:スチームで造る、華やかなモルト
宮城峡蒸溜所は、宮城県仙台市の西、広瀬川と新川が合流する峡谷に1969年に開かれました。竹鶴政孝は、余市とは異なる個性の原酒を造り、それらを合わせることでより豊かなウイスキーを生み出すことを目指して、この第二の蒸溜所を建てました。
モルトの蒸溜はスチーム(蒸気)による間接加熱で、華やかでなめらかな原酒が生まれます。
竹鶴ピュアモルト:2つの個性を合わせた1本
竹鶴ピュアモルトは、創業者の名を冠したブランドで、2000年に誕生しました。余市と宮城峡、2つの蒸溜所のモルトを合わせたピュアモルトです。「異なる個性の原酒を合わせる」という、宮城峡蒸溜所を建てたときの考えを、そのまま形にした1本と言えます。
2023年のワールド・ウイスキー・アワード(WWA)では、ブレンデッドモルト部門の世界最高賞を受賞しています。
味わいの違い
当サイトの銘柄ページでは、5つの軸で味わいの傾向を5段階で示しています。3本を並べると、違いがよく分かります。
| 味わいの傾向(5段階) | 竹鶴ピュアモルト | 余市 | 宮城峡 |
|---|---|---|---|
| スモーキー | 2 | 3 | 1 |
| 甘さ | 3 | 2 | 3 |
| フルーティー | 3 | 2 | 4 |
| スパイシー | 1 | 3 | 1 |
| コク | 4 | 4 | 3 |
※当サイト独自の目安です。
竹鶴ピュアモルト:ふくよかなコクと、穏やかなピート
- 香り: 甘くやわらかな樽熟成香に、りんごや洋梨のフルーティーな香り
- 味わい: ふくよかなモルトのコク。甘さの中にほのかなピート
- 余韻: 甘くほろ苦い余韻に、やさしいピート香が続く
宮城峡ゆずりの果実香と、余市ゆずりのピートの両方を感じられるのが特徴です。どちらか一方に偏らないので、3本の中ではいちばん「まとまりのよさ」を感じやすい味わいです。
余市:力強く、スモーキー
- 香り: やわらかな樽熟成香と麦芽の甘さ、豊かな果実香
- 味わい: 力強いピートの味わいと香ばしさ
- 余韻: 穏やかに続くオークの甘さと、スモーキーな余韻
ピート(麦芽を乾かすときに焚く泥炭)由来のスモーキーさを、3本の中でいちばんはっきり感じます。
宮城峡:華やかで、フルーティー
- 香り: りんごや洋梨を思わせる甘く華やかな香りに、やわらかなバニラ
- 味わい: ドライフルーツのような甘さと、なめらかな口当たり
- 余韻: モルトの甘みと樽香がやさしく広がる
スモーキーさはほとんどなく、3本の中でいちばん軽やかで華やかです。
おすすめの飲み方の違い
| 竹鶴ピュアモルト | 余市 | 宮城峡 | |
|---|---|---|---|
| ストレート | ◎ モルトの厚みを | ◎ 力強さを | ◎ 華やかな香りを |
| ロック | ○ | — | — |
| 少量の加水 | — | ○ | ◎ 香りが開く |
| ハイボール | ◎ 穏やかなピートが香る | ◎ 香ばしさが立つ | ○ りんごのような香りが軽やかに |
※◎はとくにおすすめ、○はおすすめ、—は当サイトの銘柄ページで推奨の飲み方に挙げていないもの(飲めないという意味ではありません)。
- 竹鶴ピュアモルトは、ストレートやロックでモルトの厚みを。ハイボールにすると、余市由来の穏やかなピートが心地よく香ります。焼き鳥(タレ)や豚の角煮のような、甘辛くコクのある料理と合わせやすい1本です
- 余市は、ストレートで力強さを、ハイボールで香ばしさを。ホッケの開きや燻製、炭火焼きによく合います
- 宮城峡は、ストレートや数滴の加水で華やかな香りを楽しむのがおすすめ。牛たんの塩焼きやフルーツを使ったデザートにも
ハイボール向きの国産ウイスキーをほかにも探したい方は、ジャパニーズウイスキーのハイボール向き銘柄のまとめページも参考にしてください。
参考価格
| 銘柄 | 容量 | 参考価格(税込) |
|---|---|---|
| 竹鶴ピュアモルト | 700ml | 約7,700円 |
| 余市 | 700ml | 約7,700円 |
| 宮城峡 | 700ml | 約7,700円 |
価格は2026年10月時点の参考価格(メーカーの参考小売価格、税込)です。2024年4月出荷分からの価格改定後の価格で、販売店や時期により異なります。
3本とも参考価格は同じなので、価格ではなく好みで選べるのがこの3本の選びやすいところです。
どれを選ぶ?迷ったときの目安
| こんな方には | おすすめ |
|---|---|
| ニッカのモルトを初めて飲む | 竹鶴ピュアモルト |
| スモーキーで力強い味が好き | 余市 |
| 甘く華やかな果実の香りが好き | 宮城峡 |
| 燻製のような香りは少しだけがいい | 竹鶴ピュアモルト |
| 燻製のような香りが苦手 | 宮城峡 |
| 1本で食事にもストレートにも使いたい | 竹鶴ピュアモルト |
| 蒸溜所ごとの個性をじっくり味わいたい | 余市と宮城峡 |
迷ったら、まずは竹鶴ピュアモルトから試すのがおすすめです。果実香もピートもほどよく感じられるので、飲んでみて「もっとスモーキーなほうがいい」と思えば余市へ、「もっと華やかなほうがいい」と思えば宮城峡へ、と好みの方向が分かりやすくなります。
3本を飲み比べるコツ
バーなどで3本を1杯ずつ頼めるなら、宮城峡 → 竹鶴 → 余市の順に飲むのがおすすめです。スモーキーさが弱いものから強いものへ進むと、香りの違いを感じやすくなります。竹鶴を飲んだときに「宮城峡の果実香」と「余市のピート」の両方を探してみると、ピュアモルトの成り立ちがよく分かります。
まとめ
- 竹鶴ピュアモルト: 余市と宮城峡のモルトを合わせたピュアモルト。果実香とコクに穏やかなピートが寄り添う、バランス型。度数43%
- 余市: 北海道・余市蒸溜所のシングルモルト。石炭直火蒸溜から生まれる、力強くスモーキーな味わい。度数45%
- 宮城峡: 仙台・宮城峡蒸溜所のシングルモルト。華やかでフルーティー、なめらかな味わい。度数45%
- 3本とも参考価格は同じ。選ぶ基準は「スモーキーさをどれくらい楽しみたいか」
ほかのジャパニーズウイスキーも見たい方は、ジャパニーズウイスキーのまとめページもご覧ください。お酒は20歳になってから、ほどほどに楽しみましょう。